やさしさの中にあった大切な叱り
小学生の頃、いつもばあちゃんの家に帰っていました。僕のばあちゃんはとにかく温厚で笑顔が絶えない人でした。正月など親戚一同が集まることが大好きで、大人数で遊ぶ孫や世間話をする娘を、いつも優しく見守り微笑んでくれていました。面倒見が良く、「さつまいもの天ぷらが食べたい」と言えば作ってくれたり、「今日泊まりたい」と言えば泊めてくれたり。無理難題によく応えてくれました。そんな怒ったことなんてないばあちゃんに1度だけ、怒られたことがあります。

僕は小学生以降、自分の想いを伝えることが苦手で、生きづらさを抱えていました。誰にも理解されず「自分の想いを伝えるのはダメなこと」と感じるように。その積み重ねで、自分の存在意義がわからなくなりました。それを救ってくれたのが、ばあちゃんでした。
あの日が、今の僕を支えている
小学4年生の頃、自殺をしかけました。学校から帰宅するなり、2階へ駆け上りベランダから飛び降りようとしました。そんな僕を勢いよく部屋に引っ張り、叫びながらお尻を何度も叩いて怒りました。「何を馬鹿なこと考えとんや!」「そんな馬鹿な孫に育てた覚えはない!」クレヨンしんちゃんによく出てくる「お尻ぺんぺん」のよう。その時、「怒られて悲しい」より「初めて怒られたことへの驚き」の方が強かったです。ばあちゃんが怒ってくれたのは、人生でこの1回だけ。ばあちゃんから、「どう自由に生きようが良い、命を自分から捨てることだけはするな!」と強く言われているように感じました。この日の光景を今も鮮明に覚えてます。ばあちゃんは3年前に他界しました。いつかばあちゃんのお墓の前で「あの時怒ってくれたから、今の僕があるよ」と胸を張って伝えられるように、僕は使命を全うし続けます。
