じいちゃんプロフィール
岡部佳文(オカベヨシフミ)1959年生まれ。66歳(2025年取材時)。北九州市若松区出身。
ソニー株式会社や大日本印刷株式会社で勤務し、BSフジの立ち上げにも携わる。50歳で神奈川県の高校の民間人校長に就任。2016年、NPO法人SoELa(ソエラ)を設立。現在はアントレプレナーシップ教育を通して「主体的に生きる高校生」を育てている。
学校と社会の分断を埋めるために
「学校と社会をシームレスにつなぎたい」その想いが、岡部佳文さんの教育の原点にあります。ソニー株式会社でBtoB営業を、大日本印刷では、新規事業や、BSフジの立ち上げを担当。民間企業の第一線で走り続けてきました。さらに、PTA会長も兼任。その中で感じたのは、学校が外の世界と閉ざされているという現実。「子どもたちは社会とどうつながって生きていくのか」という問いが、心の奥に芽生えていました。その矢先、神奈川で公募されていた民間人校長に応募し、50歳で教育の世界へと飛び込みました。企業では「自ら考え、行動する力」が問われるのに、学校では「言われたことをこなす」教育が当たり前。この断絶を埋めたい。その強い思いが、教育現場への挑戦を決意させたのです。
民間人校長として見た主体性の壁。

赴任した高校では、岡部さんは生徒たちの“受け身の姿勢”に直面しました。「いつかやります」と言いながら、結局何も始めない。そんな高校生たちの姿に、岡部さんは「主体性の欠如」という教育の課題を見出します。「社会に出ると『自分で考えろ』と言われるのに、学校では受け身を求められる。これでは子どもたちが戸惑うのも当然です」そこで彼が導き出した答えが「アントレプレナーシップ(起業家精神)教育」でした。起業家精神とは、単に会社を立ち上げる力ではありません。自ら課題を見つけ、仲間と協力し、社会に新しい価値を生み出す力。その土台こそが“自立・協働・創発”の三つの力です。岡部さんは授業にこの要素を取り入れ、社会と学校をつなぐ実践的な学びを始めました。
高校生が企業課題に挑む実践型授業
岡部さんの授業では、実際の企業課題を教材として取り上げます。高校生がグループで解決策を考え、企業の前でプレゼンテーションを行います。ときには大人顔負けの意見が飛び交い、企業側も本気で応えるため、厳しいフィードバックを返します。「高校生のうちから“失敗してもいい”場をつくることが大切なんです。挑戦の中でしか、本当の主体性は育たないから」。そう語る岡部さんの言葉には、教育への信念がにじみます。この実践を通して、生徒たちは自らの可能性に気づき、学びの意味を知っていきます。授業を終えるころには、誰もが自信を持って「自分の意見」を語れるようになるのだそうです。「社会とつながることで、学びが“現実”になる」。それが岡部さんの目指す教育のかたちです。
環境教育を“遊び”に変えた『My Earth』
岡部さんの教育観を象徴するのが、環境教育カードゲーム『My Earth』。このカードゲームは、大日本印刷時代に、慶應義塾大学の学生たちと、「遊びの力」で環境問題を“自分ごと”にするためにつくりました。カードには「森林」「大気」「動物」などの要素が描かれ、ゲームを通じて環境バランスの大切さを学びます。

2006年に誕生したこのゲームは、2016年、事業が終了。そのタイミングで岡部さんは想いを引き継ぎ、NPO法人SoELaを設立。全国の学校やワークショップで活用され、多くの子どもたちが夢中に。「勉強じゃなくて遊びの中に学びがある。だからこそ心に残るんです」と岡部さん。以来、環境教育とアントレプレナーシップ教育を融合させた取り組みを続けています。

「10のうち9はうまくいかない」でも続ける理由
岡部さんにとって、教育も経営も“挑戦”の連続です。「楽しかったのは、自分の考えたプロジェクトが思い通りに回ったとき。でも、それは10に1つ。人生も本当は辛いことの方が多いのかもしれない。でも、それも糧にしていくんだよね」。挑戦が報われないこともある。努力が届かないこともある。けれど、次の世代に「行動する勇気」を伝えたい。その一心で歩みを止めません。「これからの時代、正解は誰も持っていません。だからこそ、正解をつくり出す力が必要なんです」。そう語る岡部さんの目には、次代を担う若者たちへの期待が輝いていました。

あとがき
こんにちは、静岡から来ました。現在「うきはの宝」でインターンをしています、もーりーです。今回は、NPO法人SoELa代表の岡部佳文さんにお話を伺いました。印象に残ったのは、「10に1つの成功でも、それを糧にして生きていく」という言葉です。挑戦の裏にある悔しさや苦しさを、決して否定せず、力に変えていく。その姿勢は、教育者としてだけでなく、生き方としても胸に響きました。「主体的に生きる」とは、誰かに言われて動くことではなく、自分の意志で一歩を踏み出すこと。岡部さんが高校生に伝えたい“起業家精神”は、きっと社会で生きるすべての人に通じるものだと思います。私自身も、「正解をつくり出す生き方」を少しずつ始めていきたい。
岡部さん、本当にありがとうございました!

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