ばあちゃんプロフィール
川副 麻美(カワゾエアサミ)1952年7月11日生まれ、73歳(2025年取材時)。福岡県北九州市小倉南区合馬生まれ。約30年前、合馬地区の生産者たちと共に「合馬農産物直売所」を立ち上げた創業メンバーのひとり。結婚を機に合馬へ戻り、以来30年にわたり地域の農作物を販売してきた。合馬の特産である「たけのこ」を愛し、直売所を通して地域の絆を守り続けている。
「合馬のもんしか置かん」30年続く地域の誇り

北九州市小倉南区・合馬(おうま)。この地名を聞いて「合馬のたけのこ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。柔らかく、真っ白で、えぐみが少ないその味わいは、全国の料亭や料理人からも高く評価されています。そんな“合馬ブランド”を支えてきた場所が「合馬農産物直売所」です。川副麻美さんは、その創業メンバーのひとりで、今も毎週水・土・日の朝8時半からお店に立っています。「農協や市場では、いろんな地域のものが混ざってしまいます。でも、ここは合馬のものしか置かないんです。」と語ります。約30年前、まだこのあたりが竹林だった頃、役所から「直売所をつくってみてはどうか」と提案されたことがきっかけでした。合馬の農家たちが集まり、知恵を出し合って竹林の隣に建物を建てました。最初のころは栗や野菜も並び、連日多くのお客さんで賑わいました。「1時間待ちのときもありました。本当にすごい賑わいだったんですよ」と麻美さんは懐かしそうに笑います。しかし、年月が経つにつれて生産者も高齢化し、かつての仲間の多くが引退していきました。それでも、麻美さんは今も変わらず直売所を支え続けています。


たけのこが教えてくれる「自然の時間」。
合馬の筍は、全国的にも有名な特産品です。しかし、その栽培には繊細な自然のバランスが欠かせません。「雨が降らないと、赤ちゃんが生まれないんです。土が乾くと、保水できなくなるからですね。」麻美さんの言葉には、自然とともに生きてきた人だけが持つ実感が込められています。合馬のたけのこは、日光に当たらないように土の中にすっぽりと埋まった状態で掘り出します。そのため、真っ白で美しい色をしています。「掘る時期を逃すともうだめなんですよ。1日で顔を出してしまいますからね。」春になると、朝早くから農家が山に入り筍を掘ります。それを麻美さんたちが、採れたてのまま店に並べます。「うちは規定もないし、採れたらすぐに売ることができます。組合に出すと安く買い取られるうえに規定も多いですからね。」お客さんとのやりとりも麻美さんの楽しみのひとつです。
「『これ、どうやって食べるの?』って聞かれることもありますが、逆にお客さんから『こうしたらおいしかったよ』と教えてもらうこともあるんですよ。」直売所は、ただの販売の場ではなく、食の知恵と文化が交わる場所なのです。

もう一度、合馬に灯を
時代の流れとともに、直売所の姿も少しずつ変わってきました。「昔はお弁当を作って出していた人もいましたが、それも難しくなりました。」しかし今、希望の兆しが見え始めています。地域おこし協力隊の安村さんが着任し、再建に向けた取り組みが始まりました。「豆腐汁という郷土料理もあるんです。あれも後世に残していきたいですね。」麻美さんの願いはただひとつ。「合馬の直売所を残したいんです。」直売所は、地域の人が集い、季節と共に暮らす“居場所”でもあります。毎朝、店先に立つ麻美さんの姿は、この地を静かに見守る灯のように感じられました。

あとがき
こんにちは。静岡から来ました、もーりーです。今回は、北九州市小倉南区の「合馬農産物直売所」で、川副麻美さんにお話を伺いました。印象的だったのは、「なくなったら寂しいでしょ」という言葉でした。それは単なる感情ではなく、地域の誇りと暮らしの循環を守る強い意志のように感じました。たけのこを掘る手、店先に立つ姿、そのすべてが“合馬を生きる”ということでした。流通の便利さや効率化が進む現代の中で、30年間変わらず続けてきた麻美さんの直売所の姿勢は、人の温もりを残すための大切な場所に思えます。お客さんと顔を合わせ、「おいしかったよ」と声を交わす。そこには、買う人と作る人が支え合う心の経済が息づいていました。これからも合馬のたけのこが真っ白に輝き続けるように。そして、麻美さんのように、地域の灯を守る人が増えていくことを願っています。

合馬農産物直売所
〒803-0261 福岡県北九州市小倉南区合馬1733-1
090-451-2928
営業時間:8:30〜15:00
営業日:水曜・土曜・日曜
合馬の大地が育んだ旬の味覚をあなたへ。
掘りたてのたけのこ、季節の野菜、地元の手づくり総菜。
原風景の広がる直売所で、心のこもった味をぜひお楽しみください。
感想・コメント
0