ばあちゃんプロフィール
石橋 信子（いしばし のぶこ）1944年3月2日生まれ。81歳（2025年取材時）。熊本県人吉市で、 7人兄弟の家庭に生まれ、中学卒業後、兵庫や大阪、福岡で織物工場に勤務。 おちゃめで、少しツンデレな人柄。何より「自由に生きる」ことを大切にして生きてきた。
中学卒業で飛び出した熊本。織物と青春の日々
熊本県人吉市に生まれた信子さん。「うちは”どん百姓”でね。家が窮屈で仕方なかったのよ。」初めて出会う”どん百姓”という言葉に困惑していると、「貧しい農民のことよ」と笑って教えてくれました。 7人兄弟の中で育ち、自由を求めて中学を出ると、すぐに兵庫へ。そこには織物の機械がずらりと並び、工場には全国から来た若者たちが働いていたそうです。
休みの日には、友達と神戸の街を歩き、喫茶店でおしゃべり。「もう忘れたよ、いろいろしてきたねぇ。」と笑みが溢れます。忘れたと言いつつも、仕事仲間と遊びに出かけた日々は、今も大切な記憶として残っていることが伝わってきました。 兵庫、大阪、福岡と、織物の仕事を続けながら転々としてきた信子さん。「声をかけてもらってね。それからずっと福岡だね」 働く場所は変わっても、手を動かし、ものを作る日々は変わりません。
やがて結婚し、家庭に入ります。夫は早くに亡くなってしまいましたが、「結婚してよかったよ」と短く言い切るその言葉に、長い年月がにじみ出ています。「若かったからね。大変なんて思わなかったよ」と語る姿は、まるで当時のままの少女のようでした。
ツンデレな性格とばあちゃん喫茶
歳を重ねた今は、 URしかた団地の介護施設「なごみの家」に通われています。そんな石橋さんは、人から頼まれたのがきっかけで、「ばあちゃん喫茶」で仕事をするようになりました。「働いていて楽しいですか？」と尋ねると、「なんにも楽しくないよ。みんながやってるからやってるだけ。」とそっけなく言いながらも、キャベツの千切りをする手は止まりません。「私がやったら指切っちゃいます！」と言うと、「グーにしてたら切らないわよ！」と微笑んでくれました。その手際の良さに見惚れていると、「サボった方が楽よ、でも手仕事は好きなの。」と本音がポロリ。 まるで人生をそのまま語るような言葉でした。 彼女の手が動く限り、キャベツの山はたちまち消えていく。「こうやって話しながらできるのはいいね。」と少し恥ずかしそうに呟いていました。
自由に生きるということ
「若者へ人生を歩む中で、アドバイスはありますか？」と尋ねると、「ないよ」と即答。
けれど、少し間を置いて、こう一言。「自分で決めるのよ。全部自由なのよ。それが一番いいでしょ？」百姓の家を出て、外の世界で働き続けた信子さん。自由に生きるというシンプルでいて、力強い言葉には、信子さん自身が自ら切り開いてきた生き様が現れています。
「私はね、大概自由に生きた。好きなことをして、好きに笑って。」そんなパワフルな信子さんですが、恋愛の話になると、急におちゃめな表情に。「好きな子がいたら早く伝えなきゃだめよ！取られちゃうから。」 冗談のように聞こえるが、その奥には芯があります。 好きなこと、好きな人、好きな場所を素直に大切にする。信子さんの“自由”とは、そんな真っすぐな生き方でした。信子さんの生き方を見て、自由とは我がままではなく、責任と覚悟のある「選ぶ力」なのだと気づかされました。
あとがき
こんにちは！静岡から来ました、現在「うきはの宝」で、10日間の住み込みインターンをしているもーりーです。 今回は、ばあちゃん喫茶・梅林店で出会った石橋信子さんにお話を伺いました。そのシンプルで力強い一言一言には、自分で決断してきた生き様が現れていました。「楽しくないよ」「忘れたね」そんな素っ気ない一言の中に、彼女のぶっきらぼうな優しさが見え隠れします。 それは、長い人生を“自分の足で”歩いてきた人にしか出せない響きでした。信子さんが言った「自分で決めるのよ。全部自由なのよ。それが一番いいでしょ？」という言葉。 その一言が、進路に悩む私の胸に深く残っています。もしかしたら“自由に生きる”というのは、誰かに見せる立派なものではなく、こうやって自分の手で日々を紡ぐことなのかもしれません。 信子さん、本当にありがとうございました。
ばあちゃん喫茶
石橋信子さんが働く「ばあちゃん喫茶」は、地域のばあちゃんたちが店員として働く喫茶店です。空き家や使われなくなった施設を活用し、認知症や介護を受けていても“役割があれば輝ける”を合言葉に、誰もが笑顔で過ごせる居場所をつくっています。福岡・熊本を中心に展開しており、曜日ごとに営業。家庭的なランチや温かい会話が楽しめる、まちの交流拠点です。
ばあちゃんたちの元気に会いに、ぜひ一度足を運んでみてください。ご予約は公式LINEからどうぞ。
👉 https://lin.ee/11l3onT
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