ばあちゃんプロフィール
西園 トヨ（ニシゾノ トヨ）
1932年7月21日生まれの93歳(2025年取材時）。長崎県大村市出身。11人兄弟の10番目として、襖屋を営む家庭に生まれる。中学卒業後、喫茶店で働いていた時に福岡出身の自衛隊員の男性と出会い、22歳で結婚。几帳面で丁寧な性格を持ち、家庭を支えてきました。現在は福岡市内の団地に住みながら、小規模多機能ホーム「なごみの家 しかた」や「ばあちゃん喫茶」で日々を過ごしている。
11人の兄弟と、夫との出会い
長崎県大村市で生まれた西園トヨさんは、11人兄弟の10番目。周りで聞いていたばあちゃんたちも、これにはびっくりしていました。大家族の中でも几帳面な性格で、幼い頃から家の手伝いを欠かさなかったといいます。中学を卒業すると、近所の喫茶店でアルバイトを始めました。お客さんの中にいたのが、後に夫となる福岡出身の自衛隊員。やがて恋が芽生え、22歳のときに結婚し、福岡で新たな生活を始めました。夫は自衛隊を退職後、映画会社や公団住宅の仕事に就きました。どんな人にも優しく接し、周囲から慕われる夫を、トヨさんは常に支えてきました。「何でも完璧にしたい」という性格の彼女は、家をいつも整え、塵ひとつ残しません。買い物や、放生会（ほうじょうえ）などの福岡の祭りによく出かけていたそうです。友人との外出が好きで、几帳面さの中にも、楽しみを忘れなかった様子でした。
再び“役割”を持って輝くばあちゃん喫茶の日
平成10年に最愛の夫を亡くし、一人暮らしになったトヨさん。それでも沈むことなく、公民館のサークルで生花や習字を楽しみ、近所の人との交流を大切にしてきました。平成30年、朝食中に意識を失い入院しましたが、奇跡的に回復。その後、「特定非営利活動法人なごみの家」が運営する、小規模多機能ホーム「しかたの茶の間」に通うようになります。「しかたの茶の間」は、“通い・泊まり・訪問”の3つの介護サービスを一体で提供する場所。ここでは料理やレクリエーションも行われ、利用者同士が家族のように過ごしています。そんな中、トヨさんの几帳面さと丁寧な手仕事が生かされるのが「ばあちゃん喫茶」。福岡・熊本を中心に展開するこの喫茶店は、介護を受けていても“役割があれば輝ける”を合言葉に、地域のばあちゃんたちが働く場所です。
木曜日には、ばあちゃん喫茶梅林店で、ランチの盛り付けを担当。お皿の上の一品一品が綺麗に整い、その几帳面な性格が光ります。おとなしいながらも、おしゃべりが好きで、スタッフやお客さんとの会話を楽しんでいるそうです。千葉に住むお孫さんが来ると、一緒にドライブに出かけます。今年5月には柳川で川下りを楽しみ鰻を食べたとのこと。93歳になった今も、“自分の手で日々を整える”その姿勢は変わりません。
あとがき
こんにちは、静岡から来ました。現在「うきはの宝」でインターンをしている、もーりーです。
今回、ばあちゃん喫茶・梅林店で出会った西園トヨさん。取材を通して印象的だったのは、その“几帳面さ”と“穏やかさ”の共存でした。話す言葉は柔らかく、でも生活の隅々まで整っている。その姿から、人生を丁寧に積み重ねてきた人の凛とした美しさを感じました。夫を支え、家を守り、そして今は自分の居場所で再び誰かの役に立つ。その生き方は、「老いること」ではなく「今を続けること」そのものだと感じます。ばあちゃん喫茶では、働くことが目的ではなく、“誰かに必要とされる”ことが生きる力になっていました。トヨさんの整った手元を見ていると、人生もまた、少しずつ丁寧に形をつくっていくものなのだと気づかされます。ぜひ一度、ばあちゃん喫茶に足を運んでみてください。あたたかな笑顔と、丁寧な手仕事が、きっとあなたの心を和ませてくれます。
ばあちゃん喫茶
西園トヨさんが働く「ばあちゃん喫茶」は、地域のばあちゃんたちが店員として働く喫茶店です。空き家や使われなくなった施設を活用し、認知症や介護を受けていても“役割があれば輝ける”を合言葉に、誰もが笑顔で過ごせる居場所をつくっています。福岡・熊本を中心に展開しており、曜日ごとに営業。家庭的なランチや温かい会話が楽しめる、まちの交流拠点です。
ばあちゃんたちの元気に会いに、ぜひ一度足を運んでみてください。ご予約は公式LINEから。https://lin.ee/11l3onT
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