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還暦、夢の喫茶店マスターになる――火曜日だけの“カンレ喫茶”で紡ぐもう1つの青春|福岡県春日市

じいちゃんプロフィール
白糸 林太郎(しらいと りんたろう)
1964年(昭和39年)生まれ。60歳(2025年6月取材時)。
現在は、福岡県春日市にある「ぶどうの庭カフェ」で開催されている「カンレ喫茶」(毎週火曜日開催)で店長を務めており、入れたてコーヒーとこだわり抜いたピザトーストを振る舞っている。今回は、還暦を迎えた後に、喫茶店マスターにチャレンジしてみようと思ったきっかけを伺った。

60歳。あの頃の憧れが、今、現実になった。

白糸林太郎さん(60)は、毎週火曜日に「カンレ喫茶」のマスターとして、コーヒーの香りが漂うカウンターに立つ。「カンレ喫茶」は、福岡県春日市の《春日まちづくり支援センター》に併設された「ぶどうの庭カフェ」で開かれている、週に一度の喫茶店だ。
「ここはね、地域の人がふらっと集まる場所なんです。誰かが灯をともしておかないと、寂しくなるから」

明るい部屋でコーヒーを注ぐおじいさん。コーヒーを嗜むおじいさん。

長年のあこがれだった「喫茶店のマスター」。でも、その一歩はなかなか踏み出せなかった。

「やっぱり憧れが強いからこそ、怖さもあって。でも『ぶどうの庭』の仲間たちに背中を押されて、やってみようかなって思ったんです」

そう語る林太郎さんは、どこか照れくさそうに笑う。
店の名前「カンレ喫茶」は、「還暦」と「喫茶」をかけた洒落心から名付けた。
一杯300円のコーヒーが、火曜日を少しだけ特別にしてくれる。この日私は、アイスカフェオレ(300円)を注文。

氷の音。ドリップの湯気。店内にふわりと広がるコーヒーの香り。
雨に濡れた紫陽花と、グラスの水滴が重なる静かな午後。どこか、懐かしい時間が流れていた。

明るい部屋でコーヒーを注ぐおじいさん。コーヒーを嗜むおじいさん。
冷たいカフェオレ

「コーヒーの味はね、豆と焙煎で決まるんですよ。深煎りは苦味が強くて、アイスやラテに合う。浅煎りは、すっきりしてて香りが際立つんです」

詳しいですね、と尋ねると、林太郎さんはふと目を細めた。

「実はね、高校のときによく通ってた喫茶店があってさ——」

喫茶店「オフコース」で紡いだ青春と初恋

林太郎さんは、熊本県熊本市の出身。高校時代は映画研究部に所属し、仲間たちと映画を観たり、自分たちで撮影をしたりと、青春のひとコマをフィルムに刻んでいた。
放課後の楽しみは、学友たちと足繁く通った喫茶店「オフコース」。店内では、ギターをつま弾きながらコーヒーを飲み、くだらない話に笑い合った。当時のマスターからは、気がつけば自然とコーヒーの淹れ方まで教わっていたという。
なかでも、あの頃食べたピザトーストの味は今でも鮮明に記憶に残っている。林太郎さんはその懐かしい味を、自身の「カンレ喫茶」で再現している。

ピザパン。


そして、人生最初の恋も、喫茶店「オフコース」がそっと見守ってくれていた。
「映画研究部の撮影でね。夫婦役を演じた女の子と付き合うことになったんです。よくある話だけどね、あれは17歳のときでした」

林太郎さんが「オフコース」の思い出を語るとき、ふと遠くを見つめるような、どこか懐かしさをたたえた眼差しになる。青春と恋の記憶が、コーヒーの湯気の向こうに、ふわりと浮かんで見えたような気がした。

還暦 喫茶店「カンレ喫茶」から始まる新たな青春の物語

取材の終わりに「『カンレ喫茶』を、これからどんな場所にしていきたいですか?」と尋ねると、林太郎さんは少し照れたように、しかし確かな笑顔でこう語ってくれた。
「いろんな人がふらりと立ち寄って、ほっと一息つけるような場所にしていきたいですね」

明るい部屋でコーヒーを注ぐおじいさん。コーヒーを嗜むおじいさん。

取材を終え、私たちが席を立ち上がると、ちょうどそこへ、元気いっぱいの兄弟とお母さんの親子連れが店に入ってきた。「いらっしゃい!」と、林太郎さんの明るい声が店内に響く。淹れたてのコーヒーを片手に、お母さんはほっとひと息。その隣で、子どもたちはおやつを頬張りながら嬉しそうにはしゃいでいる。自然と、笑顔が広がる光景だった。

この店には、かつて林太郎さんが青春を過ごした喫茶店「オフコース」の面影がどこかに漂っている。

親子連れのにぎやかな笑い声が響くこの店には、「オフコース」で感じたコーヒーの香りや、人のぬくもりといった林太郎さんの“原風景”が、形を変えて息づいている。かつての青春の記憶が、今ここで、別のリズムで続いている――そんな場所が「カンレ喫茶」なのだろう。

あとがき

こんにちは!株式会社うきはの宝のインターン生・吉田愛彩(あいさ)です。今回は、福岡県春日市で喫茶店「カンレ喫茶」のマスターを務める、「リンリン」こと白糸林太郎さんに取材しました。初のじいちゃん図鑑第1号です。取材の途中、なんと共に「Mr.Children(ミスチル)」ファンだということが判明!すると林太郎さん、こっそり店内BGMをミスチルに替えてくれていて……その粋なはからいに感動しました。「カンレ喫茶」にお越しの際は、ミスチル好きをアピールすると、何かいいことがあるかもしれません。

ちなみに余談ですが、「新メニュー、何がいいと思う?」と聞かれた私は、喫茶店スイーツが大好きなので、即答で「プリン!」とリクエスト。

……が、「それは難しいかな」とやんわりお断りされてしまいました。どうやら「オフコース」とはいかず……。

明るい部屋でコーヒーを注ぐおじいさん。コーヒーを嗜むおじいさん。

林太郎さんがマスターを務める「カンレ喫茶」
カンレ喫茶
〒816-0864福岡県春日市須玖北5丁目155
営業時間 毎週火曜日10:00-16:00

ばあちゃん新聞編集部

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