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お客さんのために、今日もトンカツを揚げる。認知症になっても輝く85歳。

ばあちゃんプロフィール
谷口 正子(タニグチマサコ)
1940年(昭和15年)9月1日生まれ。85歳(2025年取材時)。中国・慶州で生まれ、幼少期に福岡県福岡市へ。中洲で小料理屋やスナックを営み、料理を通して多くの人と関わり続けてきた。現在は地域の「ばあちゃん喫茶」で厨房を担当。声が出にくくなった今も、明るい笑顔とジェスチャーでお客さんを迎え、人気を集めている。得意料理はトンカツ。息子のために作り続けた家庭の味が、いまや地域の看板メニューになっている。

中洲の夜で磨いた料理の腕

中国・慶州で生まれた谷口さんは、幼いころに日本へ渡り、福岡市で育ちました。戦後の混乱期を経て、20代で結婚。男の子3人、女の子1人を育てながら、働きづめの人生を歩んできました。福岡・中洲ではスナックや小料理屋を経営し、夜の街で長く生きてきた人です。「中洲で働いていたの」と懐かしそうに笑う谷口さんの顔には、当時の華やかさと気丈さが今も残ります。料理の腕を買われ、建設現場のまかないや、食堂の手伝いをするなど、働く場を変えながらも、常に人のために手を動かしてきました。料理を作るのが好きで、大好きな息子においしいものを食べさせたかったそうです。谷口さんの原動力は、いつも「誰かのため」でした。特に家族の食卓には人一倍の思いがありました。

サングラス ばあちゃん

谷口さんが長年作り続けてきたのが“トンカツ”です。作り続け、試行錯誤の末にたどり着いたのが、お肉を縮ませず、柔らかく仕上げる下準備の工夫でした。下味の塩胡椒をしっかり効いており、ソースもいらないくらいです。「美味しい」というと、誇らしげに笑う谷口さん。塩と胡椒だけで肉の旨みを引き出すその味は、濃いけれど上品で、噛むほどに旨みが広がります。

とんかつ 肉叩き 柔らかい

息子のために、お客さんのために 。 トンカツがつないだ日常

年齢を重ね、体調の変化も訪れました。ご病気で声が出にくくなり、思うように言葉を伝えられなくなった谷口さん。それでも、「料理をやめる」という選択肢はありませんでした。「お腹が空かないように、息子が喜ぶものを食べさせたい。」その一心で、トンカツを毎日のように揚げ続けました。認知症を発症しており、息子さんが困るほどのペースで作り続ける日々。愛情の証ではありましたが、それと同時に家族の困りごとにもなってしまいました。

おたま しゃもじ ばあちゃん

やがて息子さんの紹介で「特定非営利活動法人なごみの家」を知り、そこへ通うようになります。「なごみの家」は、地域の高齢者が集い、料理や会話を通して交流できる場所。そして、そこから生まれたのが「ばあちゃん喫茶」です。ばあちゃん喫茶は、地域のばあちゃんたちがスタッフとして働く喫茶店。空き家や使われなくなった施設を活用し、「認知症や介護を受けていても、役割があれば輝ける」という理念のもとに生まれました。現在は福岡・熊本を中心に複数店舗があり、曜日ごとに営業。手づくりのランチと温かい会話が人気を集めています。

とんかつ定食

谷口さんは2025年5月から梅林店で働き始めました。厨房でトンカツを揚げる姿は真剣そのもの。お客さんが来てから揚げ始めるため、できたての香ばしい香りが店内に広がります。「谷口さんのトンカツ目当てで来る人がいるんです」とスタッフの方が嬉しそうに話してくれました。声が出にくくても、谷口さんはジェスチャーや表情で気持ちを伝えます。指を軽く上げて「できたよ」と合図したり、笑顔でお皿を差し出したり。言葉がなくても、お客さんとの心の通い合いがそこにあります。明るく、世話好きで、社交的。若いころはダンスホールでご主人と出会ったほどの“ダンス上手”でもあり、人と関わることを何よりも楽しんでいます。

「ばあちゃん喫茶」では、そんな谷口さんの存在が、まるで太陽のようです。スタッフさんたちは「谷口さんがいると場が明るくなる」と口を揃えます。病気や年齢を理由に“できない”と決めつけるのではなく、“できることを活かして働く”という姿勢が、若い世代にも勇気を与えています。「定年したら小さな食堂をしたい」と語っていた谷口さん。ばあちゃん喫茶は、その夢が形を変えて叶った場所なのかもしれません。今は週4日「なごみ」に通いながら、息子さんとの時間も大切に過ごしています。「息子と一緒にご飯を食べられるのが幸せ」と微笑む姿には、働くことと暮らすことが自然につながっている生き方が映し出されています。

手を振る ばあちゃんたち

あとがき

こんにちは、もーりーです。今回、福岡市の「ばあちゃん喫茶・梅林店」で谷口正子さんにお話を伺いました。
中洲で長年スナックを営み、子育てと仕事を両立してきた谷口さんの姿は、働くことと、生きることが一体になった生き方そのものでした。取材を通して印象的だったのは、声が出にくくなっても、手を動かし、笑顔でお客さんを迎えるその姿です。会話の代わりに交わされるジェスチャーやまなざしには、言葉以上の優しさがありました。


「料理をすることが、わたしの元気の源」と話す谷口さん。その手で揚げたトンカツを口にすると、柔らかくて、温かくて、まるで家庭の中にいるような安心感が広がります。“役割があれば輝ける”という言葉は、まさに谷口さんの生き方を表しています。認知症という現実を受け止めながらも、自分にできることを見つけ、誰かの喜ぶ顔を見るために今日もキッチンに立つ。そんな姿が、地域の人たちの心を動かしています。

取材を終えて感じたのは、「働く」ということの本当の意味です。それはお金を得るためだけではなく、「誰かのために動ける喜び」なのだと。ばあちゃん喫茶でトンカツを揚げる谷口さんの姿には、長い人生の中で積み重ねてきた愛情と誇りが詰まっていました。

どうかこれからも、谷口さんのトンカツが、たくさんの人の笑顔をつくり続けますように。
そして、地域のおばあちゃんたちが光る場所が、もっともっと増えていきますように。

ばあちゃん喫茶

谷口正子さんが働くばあちゃん喫茶梅林店は、毎週木曜日オープン。空き家や使われなくなった施設を活用し、認知症や介護を受けていても“役割があれば輝ける”を合言葉に、誰もが笑顔で過ごせる居場所をつくっています。その他ばあちゃん喫茶も、福岡・熊本を中心に展開しており、曜日ごとに営業。家庭的なランチや温かい会話が楽しめる、まちの交流拠点です。ばあちゃんたちの元気に会いに、ぜひ一度足を運んでみてください。ご予約は公式LINEから。https://lin.ee/11l3onT

ばあちゃん喫茶
もーりー

静岡生まれ、静岡育ち。 大学3年次、1年の休学をして全国36都府県を巡る。山形県西川町では3ヶ月の地域おこし協力隊インターンを経験。 復学後、ご縁があり株式会社HONEにてインターン/マーケター見習いとして奮闘中。

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