「生きがいなかったら、人として死ぬんやよ」
僕には、血の繋がりがないけど、実のばあちゃんのように慕っていたばあちゃん「安子さん」がいます。安子さんと私との出会いはリハビリでした。訪問リハビリの依頼があり、作業療法士として僕はご自宅に伺っていました。安子さんは大阪箕面の滝の麓にある「紅葉の天ぷら」の老舗店主でした。持ち前の明るさと気前の良さがあり、リハビリ後には紅葉の天ぷらをただでくれていました。「まずは相手に与えないかんよ、相手からくれることやないんやから」それが、安子さんの口癖でした。また「私は死ぬまで店したい、生きがいなかったら人として死ぬんやよ」も口癖で、「どうやったら今の健康状態で店を継続できるか」を訪問するたび、一緒に考えていました。

人生の主役は、いくつになっても自分 〜写真とクリエイティブで伝える生き様〜
そんな中、安子さんは末期がんになってしまい、リハビリは中止になり、生きがいであった店も続けることが難しくなりました。安子さんは「がんの治療よりも店がしたい!」と想いを伝えるも、看護師やケアマネジャーからは止められてしまいました。「なんで私の人生なのに他人が口出すの!」「なんで私の人生なのに私の好きなようにできないの!」安子さんは強く訴え続けていました。リハビリが再開できないまま時間が過ぎたある日、がんが進行し、いよいよ亡くなるかもしれないとなった時、私はプライベートの時間を使って、安子さんに会いにいきました。

安子さんは私と手を握り「私みたいな人増やさんとってな」と約束をしてくれました。その1週間後に天国へ旅立ちました。安子さんの生き様から、「人にギブし続けること・自分の生きがいを持ち続けることが、人生を豊かにする」と学びました。同時に、「人生の心残りがあるシニアを減らしたい」という想いが強くなりました。「いくつになっても人生の主役は、自分」それを、写真とクリエイティブを通して伝えないといけないと思っています。