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最後までどう生きたいかについて考える|たろうクリニック通信 Vol.6

 最近講演でいただくテーマとして増えたのが、「人生の最終段階に受ける医療とケアについて考える」です。「人生の最終段階」は、以前「終末期」と言われていました。いよいよ人生の最終段階という時、どういった医療やケアを受けるか自分で判断できる人は3割しかいないと言われています。

リビングウィルの限界と課題

 多くの人が長生きするようになった中で、長生きすると多くの人が認知症の状態となるため自分で判断することが難しくなるのです。このため、事前に自分で意思を示しておこう、として考えられたのがリビングウィルや事前指示書と言われるものです。欧米を中心にひろまりましたがその後の研究で、事前に書類で意思を示しておいても、本人や家族の満足度は向上しないということがわかりました(https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/391724?utm_source=chatgpt.com)。人の気持ちは変わりうることや、事前に書類に残していない想像もしないことがしばしば起きることなどが理由のようです。

新しい考え方:アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

このため、事前に書類に残すことに変わって注目されたのが、アドバンスケアプランニング(ACP)です。ACPは、医療やケアについての話し合いを何度も重ねるプロセスを重視します。命には関わらないまでも肺炎になった、転んで骨折したなど、さまざまなタイミングで、本人と医療・介護職で話し合いを行います。また、ここで重要なのが代理意思決定者を決めておくことです。お伝えしたように、人生の最終段階において多くの人は自分で意思決定ができません。このため、「自分が意思決定できなくなったらこの人の判断に任せます」という代理意思決定者をあらかじめ決めておくのです。その上で、本人と医療・介護職の話し合いに代理意思決定者も入ってもらい、話し合いのプロセスを重ねていきます。途中で本人が意思決定を行うことが難しくなった際には、医療・介護職と代理意思決定者が話し合って方針を決定します。このときに重要なのが、本人の推定意思に沿って決定するという考え方です。過去には、本人が意思決定できない状況になった場合、「本人は判断できないのでご家族で判断して決めてください。」と決断を迫られることがありました。

家族にかかる負担を減らすために

しかしこれでは、判断の負担を家族に負わせることになり、「あそこで胃瘻を作った(抜いた)判断は良かったのだろうか」と後々まで悩みを抱えることにもつながっていました。

 また、本人の意思が尊重されていないという課題もありました。このため、話し合いを重ねた医療・介護職と代理意思決定者によって本人の意思を推定し、「今本人は認知症の状態にあるため自分で判断できないけど、もし判断できるとしたらこう希望するだろう」という推定意思に沿って決定するのです。これによって、家族などの代理意思決定者に意思決定の負担をおわせることがへり、本人の意思も尊重することができます。

ACPの効果と「人生会議」という名称

 ACPを行うことで、本人の自己コントロール感が高まり、患者と家族の満足度が向上し、遺族の不安や抑うつが減少することがわかっています。ACPという横文字では一般に浸透しにくいという考えからrenamingの検討会が行われ、「人生会議」という名称になりました。しかし、残念ながら人生会議という名称もまだ知られていないようです。「死ぬ時のことを話すのは縁起でもない」という考えもありますが、死は全員に必ず訪れます。このwebコラムを見せながら、ご家族と「最後にどう生きたいか」について話しあわれてはいかがでしょうか。


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内田直樹(うちだ なおき)
医療法人すずらん会 たろうクリニック理事長。精神科医、医学博士。認知症の専門医として在宅医療に携わる傍ら、福岡市を認知症フレンドリーなまちと
ばあちゃん新聞編集部

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